ヴォイスとは?日本語の受身・使役・使役受身をわかりやすく解説
ヴォイスとは?
日本語文法には、ヴォイス(voice)という考え方があります。
ヴォイスとは簡単にいうと、
出来事に関わる人や物を、どのような立場から文に表すか
に関係する文法カテゴリーです。
たとえば、
太郎が花子をほめました。
という文があります。
この文では、
太郎
を中心にして、
太郎が花子をほめる
という出来事を表しています。
では、同じ出来事を花子の側から表してみましょう。
花子が太郎にほめられました。
となります。
起きている出来事そのものは、
太郎 → ほめる → 花子
です。
しかし、
太郎が花子をほめた。
と、
花子が太郎にほめられた。
では、文の組み立て方が違います。
このように、同じ出来事に対して、そこに関わる人や物をどのように文の中に位置づけるかに関係するのがヴォイスです。
カメちゃん
「ほめる」が「ほめられる」に変わることがヴォイスなの?
ツル先生
動詞の形の変化も重要ですが、それだけではありません。文全体で「誰をどのように表すか」が変わることがポイントです。
ヴォイスは日本語で「態」ともいう
英語のvoiceに対応して、日本語では態(たい)という用語が使われることがあります。
英語でも、
- active voice
- passive voice
という言葉があります。
日本語では、
- 能動態
- 受動態
などと呼ばれます。
ただし、日本語文法では単に「態」ではなく、カタカナでヴォイスと呼ばれることもよくあります。
ヴォイスを理解するときは、
動詞の形がどう変わるか
だけではなく、
出来事の参加者が文の中でどのように表現されるか
を見ることが重要です。
能動文(のうどうぶん)とは?
まず基本になるのが能動文です。
たとえば、
太郎が花子をほめました。
という文です。
ここでは、
太郎
が「ほめる」という行為を行い、
花子
がその対象になっています。
構造を簡単にすると、
太郎が
↓
花子を
↓
ほめる
となります。
このように、行為をする側を中心に出来事を表す基本的な文が能動文です。
受身文(うけみぶん)とは?
同じ出来事を、行為を受ける側から表してみましょう。
花子が太郎にほめられました。
となります。
能動文では、
太郎が花子をほめた。
でした。
受身文では、
花子が太郎にほめられた。
となります。
比べると、
太郎が → 太郎に
花子を → 花子が
ほめる → ほめられる
と変化しています。
つまり受身では、単に、
ほめる → ほめられる
と動詞の形が変わるだけではありません。
文の中心になる人物も変わっている
のです。
受身というと、
何かをされた
という形だけを覚えがちです。
しかし、受身が重要なのは、
出来事を受ける側を主語として表現できる
ことです。
たとえば、
多くの人がこの寺を訪れます。
という文があります。
これを、
この寺は多くの人に訪れられています。
のように表すこともできます。
能動文では「多くの人」が行為者ですが、受身文では「この寺」の側から出来事を表しています。
つまり受身は、どの人物・物を文の中心に置くかにも関係しています。
使役(しえき)とは?
ヴォイスに関係するもう一つの重要な表現が使役です。
たとえば、
学生が本を読みます。
という文があります。
これを、
先生が学生に本を読ませます。
とすると、
先生が学生に「読む」という行為をさせる
という意味になります。
学生が本を読む
↓
先生が学生に本を読ませる
です。
使役では、もとの出来事に、
その行為をさせる人物
が加わります。
使役は「強制」だけではない
「~させる」というと、
無理やり何かをさせる
という意味を想像するかもしれません。
しかし、日本語の使役は強制だけを表すわけではありません。
たとえば、
子どもを遊ばせる。
という文では、
子どもが遊ぶことを許す
という意味になることがあります。
つまり使役には、
強制
だけでなく、
許可
などの意味が現れることがあります。
どの意味になるかは、文脈や人物関係によって変わります。
自動詞の使役
自動詞も使役形にすることができます。
たとえば、
子どもが走る。
を使役にすると、
先生が子どもを走らせる。
となります。
もとの文では、
子どもが走る
でした。
使役文では、
先生
という新しい人物が加わり、
先生が子どもに「走る」という行為をさせる
という関係になります。
他動詞の使役
他動詞でも使役を作ることができます。
たとえば、
学生が本を読む。
↓
先生が学生に本を読ませる。
です。
もとの文には、
学生が
本を
読む
という関係があります。
使役になると、
先生が
学生に
本を
読ませる
という構造になります。
使役を理解するときも、単に動詞を、
読む → 読ませる
と変化させるだけでなく、文の中の人物関係がどう変化したのかを見ることが重要です。
使役受身(しえきうけみ)とは?
受身と使役が組み合わさったものが使役受身です。
たとえば、
先生が学生に本を読ませました。
という使役文があります。
これを学生側から表すと、
学生が先生に本を読ませられました。
となります。
意味としては、
学生が先生によって、本を読むことをさせられた
ということです。
つまり、
読む
↓
読ませる
↓
読ませられる
と変化しています。
使役受身では「やらされた」という意味が出やすい
使役受身では、
自分の意志ではなく、誰かによって何かをさせられた
という意味が出やすくなります。
たとえば、
私は母に野菜を食べさせられました。
なら、
母によって野菜を食べることを強制された
という意味になります。
私は先生に作文を書かされました。
のような短縮された形も使われます。
この場合も、
自分の意志とは関係なく作文を書くことになった
という意味が表れます。
能動・受身・使役・使役受身を比べる
同じ「読む」を使って比べてみましょう。
学生が本を読む。
↓
能動
先生が学生に本を読ませる。
↓
使役
学生が先生に本を読ませられる。
↓
使役受身
また、
先生が学生をほめる。
↓
能動
学生が先生にほめられる。
↓
受身
となります。
重要なのは、動詞の形だけではありません。
誰が行為をするのか
誰がその行為を受けるのか
誰が行為をさせるのか
誰がその出来事から影響を受けるのか
といった人物関係そのものが変化しています。
ヴォイスと視点は関係している
このように考えると、ヴォイスは単なる動詞活用ではなく、話し手が出来事をどのように捉えて表現するかにも関係していることが分かります。
先生が私をほめた。
と言うのか、
私は先生にほめられた。
と言うのか。
同じ出来事でも、文の中心に置かれている人物が違います。
特に日本語では、受身によって出来事から影響を受けた人物を文の中心に置くことができます。
そのため、直接受身だけでなく、
私は雨に降られた。
私は弟にケーキを食べられた。
のような間接受身も発達しています。
まとめ:ヴォイスを整理
| 種類 | 例 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|
| 能動 | 先生が学生をほめる | 行為者を中心に表す |
| 受身 | 学生が先生にほめられる | 行為を受ける側などを中心に表す |
| 使役 | 先生が学生に本を読ませる | 誰かに行為をさせる |
| 使役受身 | 学生が先生に本を読ませられる | 誰かによって行為をさせられる |
ヴォイスとは、出来事に関わる人や物を、文の中でどのように位置づけて表現するかに関係する文法カテゴリーです。
代表的なものには、
能動
受身
使役
使役受身
があります。
ヴォイスを理解するときは、
「ほめる → ほめられる」のような活用だけを見る
のではなく、
同じ出来事を誰の側から、どのような文として表現しているのか
を見ることが重要です。
カメちゃん
ヴォイスって、動詞の形を変えるだけの話じゃないんだね。
ツル先生
はい。動詞の形と一緒に、出来事に関わる人や物の文法的な位置づけも変わるところがポイントです。