日本語の「迷惑受身」とは?|「雨に降られた」はなぜ受身?
「雨に降られた」って、どういうこと?
カメちゃん
先生、昨日雨に降られました。
ツル先生
大変でしたね。
カメちゃん
……あれ?
ツル先生
どうしました?
カメちゃん
「雨が降りました」でよくない?なんで「雨に降られました」って受身にするの?
ツル先生
いいところに気づきましたね。これは日本語の「迷惑受身」と呼ばれる表現です。
今回は、日本語学習者を悩ませる「迷惑受身」について見ていきましょう。
まず、普通の受身の例文を見てみよう
まずは普通の受身です。
先生がカメちゃんを褒めました。
これをカメちゃんの側から表現すると、
カメちゃんは先生に褒められました。
となります。
カメちゃん
これは分かる。「先生が私を褒める」から「私は先生に褒められる」だね。
ツル先生
そうです。では、次はどうでしょう。
「私は雨に降られました」
雨が降りました。
↓
私は雨に降られました。
カメちゃん
やっぱり変だよ!雨は「私」を降ってないよ!
ツル先生
そのとおりです。ここが迷惑受身のおもしろいところです。
「雨が降る」という出来事そのものには、
雨 → 私
という直接的な動作の関係はありません。
しかし、
雨が降ったことで、私は困った。
という影響があります。
つまり、
私は雨に降られました。
には、
「雨が降って、その影響を私は受けた」
という話し手の気持ちが含まれています。
カメちゃん
なるほど。「雨が降った」という事実だけじゃなくて、「そのせいで私は困った」まで入ってるんだ。
ツル先生
そういうことです。
「雨が降った」と「雨に降られた」の違い
雨が降った。
これは、単純に天気について述べています。
一方、
雨に降られた。
というと、
雨によって自分が何らかの影響を受けた
というニュアンスが加わります。
たとえば、
駅から歩いていたら、雨に降られた。
と言えば、
「濡れてしまった」
「傘がなくて困った」
などの状況が想像できます。
カメちゃん
「雨が降った」は天気の話。「雨に降られた」は私の話なんだね。
ツル先生
とてもいい捉え方ですね。
自動詞でも受身になる
迷惑受身のおもしろい特徴の一つが、
自動詞でも受身を作れる
ことです。
たとえば、
赤ちゃんが泣く。
「泣く」は自動詞です。
しかし、
私は赤ちゃんに泣かれた。
という表現ができます。
カメちゃん
赤ちゃんは私を泣いてないのに!
ツル先生
そうですね。でも、赤ちゃんが泣いたことで「私は困った」という影響があります。
たとえば、
電車の中で赤ちゃんに泣かれた。
夜中に赤ちゃんに泣かれて、眠れなかった。
などです。
構造としては、
赤ちゃんが泣く
↓
私は赤ちゃんに泣かれる
となっています。
「友達が来た」と「友達に来られた」
もう一つ見てみましょう。
友達が家に来た。
これは普通の文です。
ところが、
忙しいときに友達に来られた。
と言うこともできます。
カメちゃん
友達が来てくれたのに、なんか嫌そう……。
ツル先生
そこがポイントです。「来られた」とすると、その出来事によって自分が困ったというニュアンスが出ます。
友達が来た。
→ 友達が来たという事実。
忙しいときに友達に来られた。
→ 友達が来た。そのため私は困った。
同じ出来事でも、表現の仕方によって話し手の立場が変わります。
他動詞でも迷惑受身になる
迷惑受身は、自動詞だけではありません。
たとえば、
弟が私のケーキを食べた。
これを、
私は弟にケーキを食べられた。
と表現できます。
カメちゃん
これは迷惑だ!!
ツル先生
急に理解が早くなりましたね。
ポイントは、
私自身が「食べる」という動作を直接受けているわけではない
ことです。
食べられたのは「ケーキ」です。
しかし、ケーキを食べられたことで私が迷惑・損失・影響を受けています。
私は弟にケーキを食べられた。
という形にすることで、その出来事を「私が受けた出来事」として表現できるわけです。
迷惑受身のポイント
ツル先生
では、まとめてみましょう。
迷惑受身では、
誰か・何かがあることをする
↓
その出来事によって、私は影響を受ける
という関係があります。
たとえば、
雨が降る
→ 私は雨に降られる。
赤ちゃんが泣く
→ 私は赤ちゃんに泣かれる。
友達が来る
→ 私は友達に来られる。
弟がケーキを食べる
→ 私は弟にケーキを食べられる。
このように、日本語では「自分にとって影響のある出来事」を受身の形で表現することがあります。
「迷惑」といっても、必ず怒っているわけではない
カメちゃん
じゃあ「〜られた」を使ったら、全部「迷惑だ!」って怒ってるの?
ツル先生
そこも注意が必要です。
「迷惑受身」という名前ですが、必ずしも強い怒りを表すわけではありません。
困った
不都合だった
予想外の影響を受けた
といったニュアンスまで含めて考えると分かりやすいでしょう。
そのため、文脈によって話し手の感じ方の強さは変わります。
「何が起きたか」ではなく「私はどう影響を受けたか」
カメちゃん
分かってきた。「雨が降った」と「雨に降られた」は、同じ雨でも見ているところが違うんだ。
ツル先生
そうですね。「何が起きたか」だけではなく、その出来事が自分にどう関わったかを表現できるのがポイントです。
雨が降った。
なら、中心にあるのは「雨」です。
私は雨に降られた。
なら、中心にあるのは「その雨の影響を受けた私」です。
カメちゃん
なるほど。じゃあ先生、昨日ぼくは「先生に宿題を出されました」。これも迷惑受身ですね。
ツル先生
宿題をしてください。