持ち主の受身とは?「私は犬に手をかまれた」の文法をわかりやすく解説

持ち主の受身とは?

日本語の受身には、

私は犬に手をかまれました。

のような表現があります。

この文を見て、

カメちゃん

カメちゃん

かまれたのは「手」なのに、どうして「私は」が主語なの?

と思うかもしれません。

ここには、日本語の受身の重要な特徴があります。

私は犬に手をかまれました。

では、

手

に直接「かむ」という動作が行われています。

しかし、受身文では、その手の持ち主である「私」が文の中心になっています。

このような受身を、

  • 持ち主の受身
  • 所有者受身

などと呼びます。

「犬が私の手をかんだ」から考えてみよう

まず、受身になる前の出来事を考えてみましょう。

犬が私の手をかみました。

という文です。

構造は、

犬が

↓

私の手を

↓

かむ

となっています。

では、この出来事を「私」の側から表してみます。

私は犬に手をかまれました。

となります。

つまり、

犬が私の手をかむ。

↓

私は犬に手をかまれる。

という対応があります。

「私の手」が「私は+手を」になる

持ち主の受身で特に重要なのが、この変化です。

犬が私の手をかむ。

↓

私は犬に手をかまれる。

もとの文では、

私の手

という一つの名詞句になっています。

ところが受身文では、

私

が、

私は

として文の中心に出てきます。

一方、

手

は、

手を

のまま残ります。

つまり、

[私の][手を]

↓

[私は][手を]

という関係を見ることができます。

普通の直接受身と比べてみよう

普通の直接受身と比較すると、特徴が分かりやすくなります。

たとえば、

犬が私をかみました。

という文があります。

これを受身にすると、

私は犬にかまれました。

となります。

犬が私をかむ。

↓

私が犬にかまれる。

です。

能動文で「を」によって示されていた「私」が、受身文では主語になります。

一方、

犬が私の手をかむ。

では、直接「かむ」の対象になっているのは、

私の手

です。

しかし、

私は犬に手をかまれた。

では、その持ち主である「私」が文の中心になります。

ここが持ち主の受身の特徴です。

「手が犬にかまれた」ではないの?

単純に目的語を受身文の主語にすると考えるなら、

犬が手をかんだ。

↓

手が犬にかまれた。

という文を考えることができます。

しかし、

犬が私の手をかんだ。

という出来事について、日本語では、

私は犬に手をかまれた。

という表現が自然に使われます。

これは、単に「手に何が起こったか」を説明するのではなく、

その出来事によって「私」が影響を受けた

という捉え方をしているからです。

身体の一部でよく使われる

持ち主の受身は、身体の一部についてよく使われます。

たとえば、

私は犬に手をかまれました。

私は人に足を踏まれました。

私はボールに顔をぶつけられました。

私は子どもに髪を引っ張られました。

などです。

これらでは、

手

足

顔

髪

などに直接動作が加えられています。

しかし、それらの身体部分の持ち主を主語として受身文を作ることができます。

所有物でも使われる

身体の一部だけではありません。

自分の所有物についても、同じような表現があります。

たとえば、

泥棒が私の財布を盗みました。

という出来事があります。

これを「私」の側から表すと、

私は泥棒に財布を盗まれました。

となります。

構造を見ると、

泥棒が私の財布を盗む。

↓

私は泥棒に財布を盗まれる。

となっています。

ここでも、

私の財布

↓

私は+財布を

という関係が見られます。

「私は弟にケーキを食べられた」も同じように考えられる

たとえば、

弟が私のケーキを食べました。

という出来事があります。

これを、

私は弟にケーキを食べられました。

と表すことができます。

ここでも、

私のケーキ

の持ち主である「私」が文の中心になっています。

弟が私のケーキを食べる。

↓

私は弟にケーキを食べられる。

です。

「ケーキを食べた」という出来事によって、ケーキの持ち主である「私」が影響を受けたことが表されています。

持ち主の受身の基本構造

持ち主の受身は、基本的に次のように整理できます。

能動文

Aが BのCを ~する

↓

受身文

Bは Aに Cを ~される

たとえば、

犬が 私の 手を かむ

↓

私は 犬に 手を かまれる

です。

また、

泥棒が 私の 財布を 盗む

↓

私は 泥棒に 財布を 盗まれる

となります。

持ち主の受身では影響・被害の意味が出やすい

持ち主の受身では、

その出来事によって持ち主が影響を受けた

という意味が現れやすくなります。

たとえば、

私は犬に手をかまれた。

なら、当然「私」はその出来事によって影響を受けています。

私は泥棒に財布を盗まれた。

でも、「私」は財布を失っています。

私は弟にケーキを食べられた。

でも、

食べようと思っていたケーキがなくなった

など、持ち主への影響を感じることができます。

そのため、持ち主の受身では迷惑・被害・不利益などのニュアンスが現れることが多くあります。

直接受身・間接受身・持ち主の受身を比較

種類 受身文 もとの出来事
直接受身 私は先生にほめられた 先生が私をほめた
間接受身 私は雨に降られた 雨が降った
持ち主の受身 私は犬に手をかまれた 犬が私の手をかんだ

特に注目したいのが、受身文の主語です。

直接受身

↓

もとの文で動作の対象になっている

間接受身

↓

もとの出来事から影響を受ける人物が加わる

持ち主の受身

↓

もとの文の身体部分・所有物の持ち主が文の中心になる

という違いがあります。

 

カメちゃん

カメちゃん

「手」が受身文の主語になるんじゃなくて、その持ち主の「私」が前に出てくるんだね。

ツル先生

ツル先生

はい。「誰の身体・所有物なのか」と「誰がその出来事の影響を受けたのか」がポイントです。